靴ひも

近い将来、人間の仕事の約半分はAIに奪われる。
そんな話を聞いて、狸と狐は懐かしいなぁ…と笑い合う。
というのもその昔、人の仕事の約半分は狸と狐に奪われる、なんて言われていたからだ。
人間に化けられる狸や狐といった一部の生き物は安定した生活を求め、人間世界で生きる事を選んだ。
人間に化けられるのなら働き口はいくらでもあるし、狐や狸とバレたところで労働力の確保が優先された。
その話を聞き、中には人間に上手く化けられないのに人間世界で働こうとする狸や狐もいた。まるで勉強不足のAIが描いたイラストのようで所々に違和感が溢れるその姿。思うように人間世界に溶け込めなかった。
今のAIもそれと同じだと狐と狸は言う。必ずどこかで線引きが行われる。
実際、変化が得意な狐や狸でも、靴ひもの変化は手を抜くと言う。手が行き届かない場所は必ず出てくると言う。
AIの靴ひも。それを見つけられるかどうかが鍵と話す。