沈黙の最高値

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朽ちた遺跡コロニーの中央に、
結束と生命を映す器が、鈍い光を抱いていた。

蒼衣の解析者は数値の安定に胸を撫で下ろす。
灰衣の書記は沈黙の少年を無関心と断じ、記録を刻む。
だが、その筆先はわずかに震えていた。

少年の胸奥では波が打ち寄せる。
白眼の巫女が囁く。
「沈黙は、時に最も重い兆しとなる」

次の瞬間、器の光は閃光を放ち、闇へと沈んだ。
――一拍遅れて訪れる静寂。
残像が視界を焼き、音は消え去る。

安定指数は崩れ、沈黙の列が最高値を示す。
解析者の安堵は砕け、書記は筆を落とし、
少年の震えは波形となって広がった。

測れぬものこそが、最大の危惧。
――そして、それは守られるはずの命そのものだった。
SF
公開:25/11/23 20:58
更新:25/11/25 04:46

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、
読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。
答えが出ても、出なくても。
あなたの一行が、この物語の余白を広げます。

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