靴ひも

我が家の車庫に１匹の子猫が迷い込んでいた。
母猫とはぐれたのか、心細そうに震えている。
私は子猫に餌を与えた。最初は警戒していたものの、よほどお腹が減っていたのか皿に乗った餌をぺろりと平らげる。
それどころか、もっとちょーだい！と、せがんできた。
私はこの子を飼うと決めた。病院に連れていき、健康状態を見てもらう。
「とても健康ですよ。あとこの子の足、面白い模様をしていますね」
先生に言われて気が付いた。
まるで靴を履いているかのように足先が白い。しかも、その中に靴ひものような黒い線が入っている。
「まるでスニーカーを履いた猫ですね」
先生のその言葉に、私はこの子に好きなシューズメーカーの名を付けた。
帰宅し、猫を洗う。
足先までしっかり洗い、乾かすと靴を履いているかのような模様が消えていた。
どうやら家に上がるからと、靴は脱いだようだ。
その証拠に、排水溝に長い猫の毛が４本、残されていた。