白い線の向こうへ

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霧に包まれた森の奥に、一本の白い線が走っていた。
冷たい光を放ち、近づく者を拒むように震えていた。

「この線を越えてはいけない」
影の旅人がつぶやく。
過去の失敗の記憶が、彼を縛っていた。

「線なんて幻よ」
灯の少女が微笑む。
声は、存在と自由を試すように響いた。

森の木々がざわめき、境界線は揺らぐ。
旅人の胸に恐れがよみがえる。
だが、少女の微笑が灯となり、影を照らす。

「飛び越えてみよう」

その言葉とともに、線の光は失われ、霧に溶けていった。

旅人が一歩を踏み出す。
森は変わらなかった。

ただ、一瞬の沈黙が訪れ、息が揺らいだ。

変わったのは――旅人自身だった。

境界線はそこに残った。
ただ、彼の心の中からは消えていた。
ファンタジー
公開:25/11/19 06:35
更新:25/11/27 12:45

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、
読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。
答えが出ても、出なくても。
あなたの一行が、この物語の余白を広げます。

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