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朕は皇帝である。
朕は生まれながらにして皇帝であり、臣下や民を統べる者である。
朕が歩けば臣下が後に続き、朕が腕を伸ばして敬礼すれば民は熱狂する。
そして、朕のもとへは毎日決まった時間に民からの献上品が臣下によって届けられる。
最近、献上品の質が落ちたような気もするが、朕はそんな事で怒ったりはしない。
なぜなら、朕は皇帝だからである。

だが、朕にも分からない事がある。
民が朕に熱狂する時、決まって「かわいい」と言うのだ。
「かわいい」という言葉の意味は分からないが、朕を慕っているのだろう。

そして、朕は今日も民の前で朕がいかに民を愛しているかを説き、臣下によって届けられた民からの献上品をくちばしで受け取る。

ここは南極ではないが、朕にとっては、まごうことなき楽園である。
その他
公開:25/11/18 13:36
更新:25/11/19 12:20

加賀美 秋彦

加賀美 秋彦と申します。
学生時代からのショートショート好きが高じて、2025年4月から自分でも書き始めました。
SF作品を書く事が多いですが、幅広く色々なジャンルの作品を書いていきたいと思っております。
よろしくお願い致します。
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