頭が良くない

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 夜中、受験勉強をしていた。私は頭が悪いので、なかなかはかどらなかった。暗い気持ちでいると、お母さんが夜食を持ってきてくれた。お盆の上の皿に、ステーキが載っていた。「頭の良い人の肉よ」お母さんが言った。「頭が良い人だったから、狩るのが大変だったわ」お母さんは微笑んだ。「がんばってね」お母さんは去っていった。私は頭が良い人の肉を食べた。頭が良くなった気がした。私は勉強を再開した。しかし、ちっともはかどらなかった。『頭が良い人の肉を食えば頭が良くなる』という発想が、頭が良くないということに気づいた。私はますます暗い気持ちになった。階下から、お母さんが刃物を研ぐ音が聞こえていた。
ホラー
公開:25/11/21 07:49

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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