食卓の向こう側

苗として植えられたときから薄々察していたけど、どうやら畑の入り口から順番に収穫されるらしい。一番奥の列に並んだ僕たちがその時を迎えるのはたぶん３日後。今日ものんびり理想の献立について話し合っている。
「あたしはねぇ、おでん！　卵やちくわやこんにゃく、さつま揚げに餅巾着！　一緒に煮てもらうのが夢なんだ！」
「いやぁ、やっぱりみそ汁でしょ。水から煮て柔らかくなったところにみそを投入してもらう。俺の予想じゃ、みそと相性いいのは我々大根が余裕でTOP３に入ると思うのだがね」
このふたりが話しだすとそのうち口喧嘩に発展してしまう。いつもだったら隅っこで黙ってるぼくだけど、勇気を出して発言した。
「きっとどんな料理になっても僕たちは最高です！　だって食卓の向こう側が笑顔になってるのが想像できますから！」
沈黙ののちに、みんながいっせいに拍手してくれた。すると人間がやってきて、いっせいに収穫された。