線の中の王様

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 子どもの頃、僕はずっと誰かの後ろに隠れていた。
 純粋に人が怖かった。急に話しかけられて、なんて返していいかわからなかった。
 そんな自分が情けなくて、自身が持てなくて、ずっとひとりだった。

 親の用事が済むまで、公園で暇をつぶすことが多かった。
 そんな時、僕はいつも地面に線を書いて、自身をぐるりと囲った。誰にも話しかけられないように。
 その線の中なら僕は王様だった。無口で情けない自分なんていなかった。
 だからこそ、帰る時その線を越えるのが怖かったこと覚えている。情けない自分に戻るのが嫌だったから。
 物理的には線を越えていた。でも心が越えていなかった。線を越える勇気が欲しかった。
 
 そんな時に出会ったのが物語だった。次は空想の中で王様になった。
 線を越えるどころか、新しい線を書いた。結局あの時と何も変わらない。

 いつか自分の力で線を越えて、友達ができたらいいな。
青春
公開:25/11/19 22:13

猫目ちゅん

のんびり書いていきます。よろしくお願いします。日常を書くのが好きです。でも、ファンタジーも好きです。思いついたものならなんでも好きなのかもしれません。

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