急活

急活をはじめた。急活とは文字どおり、急いで活動することである。
こどものころからやることなすこと「遅い」「マイペース過ぎる」と揶揄されてきたが、もうそんなことは言わせない。とにかく誰よりも早くタスクを完了させることに集中し、今度こそ「早いね」「もはやスピード狂だね」と評価してもらうのだ。
５０歳にしてようやく自らの抜本的改革に目覚めた私は、社屋のエントランスが開くのと同時に出勤し、湯を沸かした。いつもなら遅刻ギリギリに机につき、ヨレヨレのスーツをからかわれていたものだが、それは過去のこと。今朝は余裕があるおかげでコーヒーが飲めるし、なんなら無人の廊下で趣味のブレイクダンスを踊ることも可能だ。
「よし、しばらくぶりにヘッドスピンをやろう。髪型なんて後で直せるしな」
コーヒーを傍らに置き、勢いよく頭だけで回転する。次に起きたことはご想像通りである。死に急いでしまい、The End。