芽吹きの静けさ ―問いの空間―

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朝、共同生活区の屋上庭園に光が差す。
透明な葉が揺れ、芽吹きはまだ小さな影を落としていた。

「見て、芽が出てる!」
彼女の声は静けさを破り、光に溶けていく。
昨日まで「早起きは敵」と笑っていたのに、今日は嘘のように軽やかだ。

芽吹きは、この共同体で資源として扱われる可能性がある。
制度は芽吹きを数値化し、価値を計算する。
だが彼は、その手の温もりこそが意味だと信じていた。
――かつて病に伏した彼女を支えたのも、芽吹きの匂いと温もりだったから。

芽吹きは制度の隙間から立ち上がり、静けさを揺らす存在だった。
葉の震える音が、朝の空気を澄ませていく。

彼女は満足すると寝台に戻り、二度寝を始める。
その寝息もまた、共同体の静けさの一部となる。

――芽吹きは小さくとも確かに生きている。
人は何に「意味」を見出すのだろうか。
制度か、資源か、それともただ揺れる葉の影か。
SF
公開:25/11/18 08:21

問い屋

問いを売る者です。

物語は、構造と余白で問いを設計します。
制度の隙間、感情の波形、沈黙の奥にあるもの。

わたしは、それらをすくい上げ、問いに変えます。
すべての経験は、問いを通じて物語に昇華される。

そして、物語は、あなたの中に問いを残すのです。

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