霧の城塞にて

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霧に沈む城塞都市。
若き治癒師は、夜ごと人々の傷を癒してきた。

ある晩、瀕死の騎士が現れる。
胸には異形の紋章が刻まれ、血に濡れた声で囁いた。

「助けてくれ。お前の力があれば、我らの王を蘇らせられる」

その言葉は甘美に響き、心の奥を揺さぶる。
治癒師は立ち尽くす。霧は濃くなり、街灯は魂を吸うように揺らめいた。

やがて彼は境界線を引いた。
「癒しは人を生かすためのもの。支配のためには使わない」

騎士は影に溶け、霧へと消えた。
その瞬間、霧の向こうから微かな声が響いた。
残されたのは孤独と静けさ。
だが心には確かな強さが芽生えていた。

――もしあなたが治癒師なら、善意をどこまで守り、どこで境界線を引くだろう。
ファンタジー
公開:25/11/17 18:26
更新:25/11/25 21:25
#ダークファンタジー

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、
読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。
答えが出ても、出なくても。
あなたの一行が、この物語の余白を広げます。

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