シー坊の旅

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ある日とつぜん耳たぶに謎のできものができた。半透明の琥珀色で、大きさは1センチほど。そのうち消えるでしょうとのんきに構えていたら、いつの間にかなかで生物が育っていた。
「ねぇアキコ、この子に名前つけない?」と提案してきたのは親友のミヨコ。「タツノオトシゴに似てるから、タッちゃん!」
「それだと芸がないから、シーホは? タツノオトシゴを英語にすると、シーホースなのよ」
「呼びにくいから、シー坊は?」
「いいわね! さっそく今日からシー坊って呼びましょ!」

そんな会話をしたのは約70年前。数日後『アキコ』に成り代わったわたしことシー坊であるが、肉体の寿命が近いため、病床に訪ねて来たミヨコに真実を打ち明けた。
「知ってたわよ!」と親友は笑う。「アキコは病弱だったから。シー坊の力がなかったら、長生きできなかったもの」
乗っ取ったくせに涙があふれた。わたしも長い眠りにつくことにした。
SF
公開:25/11/16 20:57
更新:25/11/16 22:44

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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