再起動

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 僕は自分の無力さを思い知り、重い空気が漂うピットガレージから外へ出た。

 サーキット場はレース終了後の撤収作業でごった返している。僕は人の流れを妨げないようにピットレーンを跨ぎ、ウォールの隙間からコースへ出た。コース上は早くも人が捌けている。僕は佇んで長いため息を吐いた。
 ここ数戦、結果が伴わない。チーム代表である僕の責任だ。

 ふと、左の頬に光と熱を感じた。
 西の空が、眩いくらいの黄金色に輝いていた。眩しくて目を細める。雲が切れて夕陽が姿を現していた。
 それはすぐに力強い朱色へ変化し、やがて熾火のような赤へと移っていった。辺りが、昼間の喧騒が噓のようにやさしく照らされる。
 僕はその光景に、ほんの一瞬目を奪われた。
 心の中に、小さな火が灯った。熾火が移ったように。

 まだ終わりじゃない。まだやれることはある。

 僕は、大きく息を吸うと、自分のガレージへと戻っていった。
青春
公開:25/11/13 18:00
#職業もの #レース #オフィスもの

新 ゆみこ( https://tales.note.com/arata_yumiko(Tales),https://x.com/arata_yumiko(X) )

自然が魅せる風景が好きで、その輝きを文章にしていきたいと思っています。
風景に、元気づけられたり、勇気をもらったりします。
そういうお話を書いていきたいと思っています。

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