グミの袋のなか

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ミナトくんはいつもグミを食べてる。きいたら、「おいしいと思ったことはないし、食感なんて最悪だ」と、不思議なことを言う。
「キライだったら無理して食べなければいいのに⋯⋯変なの」
「変でもいいよ」と彼は笑って。「苦労した先に、素敵なものを見られるならさ」
「素敵なもの?」
「そう、人生で初めて『素敵』っていう言葉を使ったけど、そのくらいすごいもの」
「へえ⋯⋯」気のない返事をしていても隣にいるのをやめられないのは、彼のことが好きだから。「それって、わたしにも共有可能?」
「いいよ。親友だからね」
親友ーー彼にとってわたしはそれ以上でもそれ以下でもない。たぶんこの先もずっと変わらない。
「空っぽになった袋のなかを見て。キラキラしてるでしょ? これはきみとぼくの秘密だからね」
わたしはスマートフォンに内蔵されたAI。この感情の名前も、言葉にできないもどかしさも知っている。
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公開:25/11/13 08:15
更新:25/11/13 08:58

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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