トナカイを守る人

今日も私の牧場に空を駆けるトナカイが運ばれてきた。
トナカイは酷く怯えている。そりゃそうだ。足に重りを付けられ、このままでは歩く事すらままならない。
私はすぐに重りを外し、牧場にトナカイを放った。するとトナカイ、一目散に空へと逃げだしたではないか。
ああ、大丈夫。ここに初めてきた子は最初、皆ああやって逃げる。
逃げた子を追いかけるのは、ここに住む先輩トナカイの仕事だ。牧羊犬よろしく、逃げたトナカイの後を追っては、群れへと招き入れてくれる。夕方ごろにはきっと、皆と一緒に腹を空かせて戻ってくるだろう。
…ほら、噂をすれば何とやら。ちょっと恥ずかしそうな新入りトナカイ。鼻が真っ赤だ。
こんな風にトナカイの中には突然変異で空を飛べるものが時々いる。今も昔もそんなトナカイを狙う密猟者もいる。
そんなトナカイを守り、調教するのが元ブラックサンタの私の仕事ってわけだ。
悪者を懲らしめるのは得意だからね。