電球

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 夜、三本目の酒を開け、するめをかじりながら、テレビにも飽きたので、カーテンを開け窓の外の夜空を見上げる。黒枠に入れられた月の遺影が、夜空の真ん中に浮かんでいる。黒枠にはいくつもの電球が取り付けられていて、それが月明かりを再現している。月がなくなってどのくらい経つのだろう。頭の中で計算するが、酔っているせいでうまく計算できない。ふと月の葬式のことを思い出した。テレビで中継していたが、思ったよりも弔問客が少なかった。まあもともと誰も月なんて見ていなかったしな。そんなことを考えていたら、電球のうちの一つが切れていることに気づいた。教えてあげた方がいいんだろうか。しかしどこに電話すればいいんだっけ。スマホで調べかけて、やっぱりやめた。月を見ていたことを知られるのが恥ずかしい。
SF
公開:25/11/12 19:27

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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