高野豆腐のリーダーシップ

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高野豆腐がリーダーシップを発揮して、「こうや、こうや」と何でも決めてくれるので煮物仲間は安心して任せていたが、リーダーに足る具材なのか。だんだん疑問が生じてきた。

「どうして豚肉が入ってるんですか? 今日は優しい和食って決まってたのに」と蒟蒻。
「あ~、賞味期限が近いそうやから」
「だからといって、なぜバターまで?」と人参。
「さみしそうやったから。しみこませとけば、ええやん」

「これじゃ方向がバラバラだ!」大根も大混乱。
「ちゃんとしてください!」皆が詰め寄る。

高野豆腐は遠い目をした。
「やってるつもりやけど。オレ、中身、スカスカやから……」

鍋の中が静まりかえる。

大根が言う。「スカスカだからこそ、味が染みる。あんたのおかげで、煮崩れたやつも救われるんだ」
湯気がフッとゆらめいた。
豚肉もバターもホッとした顔になる。

胃には重いが、思いの詰まった優しい煮物に仕上がった。
ファンタジー
公開:25/11/14 20:16
更新:25/11/14 20:21

藍見サトナリ

ご覧くださってありがとうございます。
学生時代、文芸部に所属して短いお話を書いていました。あれからウン十年、仕事、家事育児に追われて自由な創作から離れていましたが、心のリハビリ(ストレッチ?)のために登録。
//日々の生活が追ってくるため、ログインが不定期になります。

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