テリアさん　@005

　そのとき、ポアロが事件解決の糸口を探しあて…

ぼくの背中にふれるものがある。驚きのあまり、はっと振り返る。

―い、いつからいたの？

ぼくが言うと、

―あ、ごめん、気がついてると思ってたあ

テリアさんは言った。

―え？

とぼく。

―気がついてて無視されてるのかなあ、なんて、ちょっとさあ

―そんなことしないよ

テリアさんは、部室によく顔を出してくれる。けれど、入部したわけではないようだ。
そのあたりのこと、テリアさんは、

　あたし、嫌われてるからさあ

との言葉で明るくまとめてしまった。
あんまりよく理解できなかった。けれど、いろいろあるんだろうなあと、ふうん、という返答で、ぼくは、短くまとめてしまった。

テリアさんと一緒に部室を出て、テリアさんと一緒に駅まで歩く。

　あたし、嫌われてるからさあ

その言葉が、頭から離れない。




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