またひとつなくなりました

『…の職業がまたひとつＡＩによってなくなりました。次は火事のニュースです』
平民はその続報を畏怖と嫌悪の情で受け流し、経営者はその朗報を畏敬と歓喜の理性で受け取った。
「よし、これで我が社も更に人件費の削減が捗るぞ」と社長は会議で言った。
「営業、経理に続き開発までＡＩとは流石にやりすぎかと。社員が居なくなります」専務は苦言を呈した。
「何の問題がある、全ての社員をＡＩに置換えたいくらいだ。文句無く２４時間働くだろう」
「しかし社長、それではいつかワタ…」
「黙れ！社員の人格をＡＩに学習させてから辞めさせろ。今と変わらない働きをするだろう」社長はしたり顔だ。

「我々が新商品を開発しました。早速我が社での導入を検討願います」ＡＩ技術者が言った。
「なんだそれは。ふざけるのも大概にしろ」社長は怒鳴った。

『世界初のＡＩ社長の誕生です。経営という職業がまたひとつＡＩによってなくなりました』