流れる自分

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川辺で僕はため息をついた。
「結局、自分って何者なんだろうな…」

隣で石を投げていた彼女が、にやりと笑う。
「探してる自分と、探されてる自分。どっちが本当だと思う?」

「え、テストみたいに急に聞くなよ!」僕は慌てて石を投げたが、足元へ落ちて泥だらけ。

彼女は吹き出した。
「ほら、失敗する自分も本当のあなたじゃん」

「…笑うなよ」僕もつられて笑う。

「川を眺める自分と、川に浸かる自分。両方があなたなんだよ」彼女は靴を脱ぎ、冷たい水に足を入れる。

僕も真似したが、石に足をぶつけて顔をしかめる。
「いてて…」

「それもあなた」彼女は肩をすくめる。
「問いを抱えたまま生きるのも、失敗を抱えたまま笑うのも、同じ自分」

僕は泥だらけの靴を見下ろし、ふっと笑った。
「失敗しながら笑ってる僕も、悪くはない」

川は静かに流れ続ける。

あなたは今、探す側ですか?それとも探される側ですか?
ファンタジー
公開:25/11/14 06:50
更新:25/11/27 14:21

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、
読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。
答えが出ても、出なくても。
あなたの一行が、この物語の余白を広げます。

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