綺麗な思い出
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「兄さん、ビールが湿気ちまう」
カウンター越しの声に顔を上げれば随分ぼんやりしていたようで、綺麗に盛っていた泡がシュンと萎んでいた。一息に飲み干せば喉の奥でクシュリと泡が潰れる音がした。
「この店は十年ぶりでさ」
「へぇ、俺が始める前だね」
「構えが同じだから勘違いしたんだよ」
「そりゃ残念なことで」
少々機嫌を損ねた主人の声に慌てて付け足す。
「料理はご主人の方が美味い。断然」
「そうかい?」
満更でもない様子で泡立ち豊かなビールが目の前にタンと置かれる。
「前は小料理屋で綺麗な女将さんがやってたんだ」
「惚れてたのか」
「飲みっぷりが惚れ惚れする」
カッとグラスを掴んでシトリと唇を濡らした泡はコクコクと喉に吸い込まれてつられた喉仏がトクリと動き、虚空にプハッと息を吐く。その姿が実に凛々しい……あれ? 何か変だなと思いつつ、気づけばシュワッと杯を干していた。
「あんたも中々だよ」
カウンター越しの声に顔を上げれば随分ぼんやりしていたようで、綺麗に盛っていた泡がシュンと萎んでいた。一息に飲み干せば喉の奥でクシュリと泡が潰れる音がした。
「この店は十年ぶりでさ」
「へぇ、俺が始める前だね」
「構えが同じだから勘違いしたんだよ」
「そりゃ残念なことで」
少々機嫌を損ねた主人の声に慌てて付け足す。
「料理はご主人の方が美味い。断然」
「そうかい?」
満更でもない様子で泡立ち豊かなビールが目の前にタンと置かれる。
「前は小料理屋で綺麗な女将さんがやってたんだ」
「惚れてたのか」
「飲みっぷりが惚れ惚れする」
カッとグラスを掴んでシトリと唇を濡らした泡はコクコクと喉に吸い込まれてつられた喉仏がトクリと動き、虚空にプハッと息を吐く。その姿が実に凛々しい……あれ? 何か変だなと思いつつ、気づけばシュワッと杯を干していた。
「あんたも中々だよ」
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公開:25/11/09 21:36
更新:25/11/09 22:14
更新:25/11/09 22:14
Temppです。よろしくー。
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