言い訳装置 —未来を曇らせる霧—

ある日、
職場の片隅に「言い訳装置」が設置された。

誰が置いたのかは、誰も知らない。

ボタンを押すと、
もっともらしい理由が霧のように噴き出す。

「上司の指示が曖昧だった」
「体調が万全でなかった」
「環境が整っていなかった」

その霧は、
責任の所在を曖昧にし、
未来の予測を奪った。

やがて装置の前には長蛇の列ができ、組織は霧の中で迷子になった。

ただ一人、
装置に背を向けた者がいた。

彼の足跡だけが、霧を切り裂く道となった。

だが彼も、
かつてその装置に手を伸ばしたことがある。

その記憶が、未来を照らす灯となった。

そして彼は気づいた。

この装置は、
誰かが設計した「予測不能を正当化する仕組み」だったのだ。

彼の灯は、いずれ誰かの霧をも照らすだろう。