証明の魔法陣 —逃げる者に祝福を—

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「祖母が危篤?
では“魂の結晶”を提出してもらおうか」

そう告げたのは、配属初日に現れた
“証明の魔法陣”の管理者だった。

この職場では、感情も事情もすべて
“魔法的証明”によって認定される。

「悲しみ? 涙の結晶を提出」
「疲労? 影の濃度を測定」
「辞意? 心の灯の揺らぎを記録」

私はある日、逆に問うた。

「あなたに“良心”があるなら、
その魔法陣を描いてください」

管理者は沈黙した。

だがその瞳には、
わずかな揺らぎが走った。

翌日、“証明の魔法陣”は書き換えられた。

新しい魔法陣は
「心の健康証明書」を自動で生成し、
申請者に“逃走の祝福”を与えるようになった。

そして私は、逃げた者にだけ渡される
「祝福の印章」を受け取った。

その印章には、こう刻まれていた。

逃げる者に祝福を

それは、私が“犠牲者ではなく旅人”であることを
証明する、最初の魔法だった。
ファンタジー
公開:25/11/13 08:00
更新:25/11/11 11:01
#逃走の祝福 #証明の魔法陣 #良心の揺らぎ

問い屋

一瞬のズレを物語に仕込み、
読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。
答えが出ても、出なくても。
あなたの一行が、この物語の余白を広げます。

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