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「祖母が危篤?
では“魂の結晶”を提出してもらおうか」
そう告げたのは、配属初日に現れた
“証明の魔法陣”の管理者だった。
この職場では、感情も事情もすべて
“魔法的証明”によって認定される。
「悲しみ? 涙の結晶を提出」
「疲労? 影の濃度を測定」
「辞意? 心の灯の揺らぎを記録」
私はある日、逆に問うた。
「あなたに“良心”があるなら、
その魔法陣を描いてください」
管理者は沈黙した。
だがその瞳には、
わずかな揺らぎが走った。
翌日、“証明の魔法陣”は書き換えられた。
新しい魔法陣は
「心の健康証明書」を自動で生成し、
申請者に“逃走の祝福”を与えるようになった。
そして私は、逃げた者にだけ渡される
「祝福の印章」を受け取った。
その印章には、こう刻まれていた。
逃げる者に祝福を
それは、私が“犠牲者ではなく旅人”であることを
証明する、最初の魔法だった。
では“魂の結晶”を提出してもらおうか」
そう告げたのは、配属初日に現れた
“証明の魔法陣”の管理者だった。
この職場では、感情も事情もすべて
“魔法的証明”によって認定される。
「悲しみ? 涙の結晶を提出」
「疲労? 影の濃度を測定」
「辞意? 心の灯の揺らぎを記録」
私はある日、逆に問うた。
「あなたに“良心”があるなら、
その魔法陣を描いてください」
管理者は沈黙した。
だがその瞳には、
わずかな揺らぎが走った。
翌日、“証明の魔法陣”は書き換えられた。
新しい魔法陣は
「心の健康証明書」を自動で生成し、
申請者に“逃走の祝福”を与えるようになった。
そして私は、逃げた者にだけ渡される
「祝福の印章」を受け取った。
その印章には、こう刻まれていた。
逃げる者に祝福を
それは、私が“犠牲者ではなく旅人”であることを
証明する、最初の魔法だった。
ファンタジー
公開:25/11/13 08:00
更新:25/11/11 11:01
更新:25/11/11 11:01
#逃走の祝福
#証明の魔法陣
#良心の揺らぎ
一瞬のズレを物語に仕込み、
読み終えたあとに問いが残る作品を書いています。
答えが出ても、出なくても。
あなたの一行が、この物語の余白を広げます。
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問い屋