この世に存在するための方法
1
2
ある日私は「存在管理局」というところに呼び出された。
係員が言う。「あなたの存在理由が不明確になっております」
どうやら近年は“存在する資格”が定期審査されるらしい。仕事、家族、社会貢献、どれも中途半端な私は、減点が重なっていたようだ。
「再審査となりますので、存在理由を提出後、期限までに再度お越しください」
帰宅して考えた。存在理由、生きる目的? そんな大げさなものはない。仕事はほどほどだし、起きて食べて、猫を撫でて寝ているだけだ。
投げやりに、提出フォームに一行だけ書いた。
<存在理由:猫の撫で心地を記憶しておくこと>
再び管理局へ行くと係員は無表情に言った。「有効です」
「いいの!?」思わず声が出た。
「なんでもいいんです。ただ、時折意識することが大事なんです」
そして手続きは淡々と終わった。
建物を出ると風がやわらかい。とんだディストピアだが、そう悪くないのかもしれない。
係員が言う。「あなたの存在理由が不明確になっております」
どうやら近年は“存在する資格”が定期審査されるらしい。仕事、家族、社会貢献、どれも中途半端な私は、減点が重なっていたようだ。
「再審査となりますので、存在理由を提出後、期限までに再度お越しください」
帰宅して考えた。存在理由、生きる目的? そんな大げさなものはない。仕事はほどほどだし、起きて食べて、猫を撫でて寝ているだけだ。
投げやりに、提出フォームに一行だけ書いた。
<存在理由:猫の撫で心地を記憶しておくこと>
再び管理局へ行くと係員は無表情に言った。「有効です」
「いいの!?」思わず声が出た。
「なんでもいいんです。ただ、時折意識することが大事なんです」
そして手続きは淡々と終わった。
建物を出ると風がやわらかい。とんだディストピアだが、そう悪くないのかもしれない。
ファンタジー
公開:25/11/10 23:40
ご覧くださってありがとうございます。
学生時代、文芸部に所属して短いお話を書いていました。あれからウン十年、仕事、家事育児に追われて自由な創作から離れていましたが、心のリハビリ(ストレッチ?)のために登録。
//日々の生活が追ってくるため、ログインが不定期になります。
ログインするとコメントを投稿できます
藍見サトナリ