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私は自慢の靴を履いている。人気メーカーの限定カラーで、履き心地も抜群。
でも何よりも、靴紐がすごいのだ。
皆には内緒だけど、この靴紐は、自分で動くことができる。結んだりほどいたりはもちろん、ほどいた紐を足のように使って、靴を動かすこともできる。
この靴紐はとてもいいやつで、私が雑に脱いでも靴箱によじ登って入ってくれるし、朝はそこから出て三和土で待っていてくれる。しかもこんなに動けるのに、私が歩いている間はじっとしている。
そんな靴紐が今朝、もうすぐ駅という所で突然ほどけた。
ほどけるなんて初めてで、うろたえる。もたもた直している間に、いつも乗る電車が行ってしまった。
ヤバい、遅刻!
焦って次の電車に飛び乗ったら、目の前に大好きな先輩がいた。
そうか、だからか…
私はそっと足元に目を落とす。
すると、靴紐がシュルシュルとほどけて、先輩の靴紐に絡まり始めたではないか。
それはやりすぎだって!
青春
公開:25/11/10 20:02

藤原チコ

読むのも書くのも好きです。よろしくお願いします!

2022 ショートショート集『節目の一杯』(つむぎ書房)
2023 愛媛新聞超ショートショートコンテスト特別賞「かぞくしんぶん」
2024  第20回坊っちゃん文学賞佳作「鯉のぼり」
2025 第1回「5分後に意外な結末大賞」特別審査員賞「呑言症」

発表し合える場、とてもありがたいです!

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