男の美学

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昭和に生きてきた男。明彦は努力と根性が信念。
人との繋がりを大事にし、敬意や道徳に煩い。幼少期は夢だとか、憧れとか希望に溢れていた。
自分の目標に到達する為には、努力を惜しまない。
「明彦くんは、かっこいいね。」
女性からのそんな言葉を聞きたくて、男の美学を貫いてきた。

「明彦さんにはわからないわ。」
ある日、突然、別れを切り出された。
男の美学を貫いてきたのに何故?と苦しんだ。
仕事から帰ったら、彼女の手料理がもうない。
「おかえり。」の言葉も、もう聞けない。
明彦は会社を辞めた。段ボールが住まいになった。

愛が感じられなくなった時、人は突然、居なくなる。
「おかえり。」の言葉は安心感を与える。自分の存在を感じさせてくれる。

「おかえり。」を失うと帰る場所がない。

男の美学は生きる気力を失わさせる。孤独で生きたくないのならば、不要のもの。
公開:25/11/10 19:21

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