詩人
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詩人がほとんど絶滅した国で、一人の詩人が捕えられ、研究を目的とした飼育の後、剥製にされた。その剥製は、ある博物館に展示されることになった。ある日、巡回中の警備員が、その詩人の剥製の前に、何かが置かれていることに気づいた。それは、一本の缶ビールだった。警備員は、それを手に取り、何気なく剥製の解説パネルを見た。『酒が好きだった。』と書かれていた。警備室に戻り、監視カメラの映像を確認すると、一人の青年が、詩人の剥製の前に缶ビールを置く映像が残っていた。その青年の顔は、どことなく、剥製の詩人に似ているように見えた。警備員は缶ビールを学芸員に届けた。学芸員はとりあえずそれを給湯室の冷蔵庫に入れておいたが、それはいつの間にか誰かに飲まれてしまった。
ホラー
公開:25/05/09 20:40
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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