この先行き止まり

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 翔太の家の近くに、「この先行き止まり」の札がかかっている場所がある。母さんから入ったらだめと言われているが、向こうは草むらで、通り抜けられそうに見える。

(向こう側に行けるかもしれない) 
 そう思った翔太は、草むらの中に入ってみた。
 草むらを抜けると、見知らぬ風景が広がっていた。広場があり、同じ年頃の子供達が遊んでいる。
 見ていると、向こうから声をかけてきた。
「翔太くん、一緒に遊ぼう」
 どうして僕の名前を知っているんだろうと思いながら、翔太は子供達と遊んだ。
 
 だんだん薄暗くなってきた。もう日暮れだ。
「そろそろ帰ろうか」
 みんな自分の家に帰り始める。
 翔太は周囲を見回した。出てきた草むらがない。どうしよう。

 向こうから声が聞こえた。
「翔太、おいで。遅いから心配してたのよ」

 母さんのような人の声。でも母さんじゃない。

 こっちの世界で暮らすのもいいか。
ファンタジー
公開:25/05/09 18:15

ナラネコ

老後の楽しみに、短いものを時々書いています。

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