売れない画家

私は絵を描きながら世界中を自由気ままに旅をしている。
路銀は最低限度。たくさん持っていても旅の邪魔になるだけだからね。
宿は基本、人の家に泊めてもらっている。
礼に絵を描くと言えば、ほとんどの人が私を家に泊めてくれる。
さて…今日はどんな絵を描こうか？家人に話を聞き、イメージを描き起こす。
そうしていると不思議な事に描いてもいない筈の人物画が私の絵の中に現れる。
そいつは勝手気ままに絵の中を歩き回り、時には話しかけてくる。
多くの人がイマジナリーフレンドだと話すそれは、私だけでなく家人にも見えている。
それは家人にとって、とても大切な人だそうだ。だからそれは家人の話相手になる。
友人。家族。恋人。そこに現れる人物画は様々。
だからこそ、皆私の描いた絵を「大切にする」と言ってくれる。
そんな私の絵を画商は高く評価しているらしい。
だが私の絵を持つ人は、誰もそれを売りに出そうとはしないそうだ。