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滝行が良かったよ。という同僚の勧めでその寺を訪れたのは、山里に梅がかすかに香る頃だった。その日、体験者はわたしだけだった。高さ三メートルほどの滝の前でお坊さんの説明を聞いた。胸の前で手を合わせるように言われ、その手を数珠でぐるぐる巻きに固定された。
「どうぞ」
爪先に触れた水は冷たい。いや、もはや痛い。それでもゆっくりと歩を進め、まもなく滝の下という矢先、何かに足をすくわれた。
アッと手を広げると、両手を戒めていた数珠が弾けた。バシャバシャと水が弾ける音を聞いた。
気づけば布団の中。お坊さんが安堵の息をもらし、それから気の毒そうに言った。
「左腕が動くようになるまでお休みください」
見ると、左腕は紫色に浮腫んで、何かが幾重にも巻きついたような跡があった。
「何があったのでしょうか」
と聞くと、お坊さんは、
「ソイネガフチです。難儀なことでした」
と答え、すっと部屋を出ていった。
「どうぞ」
爪先に触れた水は冷たい。いや、もはや痛い。それでもゆっくりと歩を進め、まもなく滝の下という矢先、何かに足をすくわれた。
アッと手を広げると、両手を戒めていた数珠が弾けた。バシャバシャと水が弾ける音を聞いた。
気づけば布団の中。お坊さんが安堵の息をもらし、それから気の毒そうに言った。
「左腕が動くようになるまでお休みください」
見ると、左腕は紫色に浮腫んで、何かが幾重にも巻きついたような跡があった。
「何があったのでしょうか」
と聞くと、お坊さんは、
「ソイネガフチです。難儀なことでした」
と答え、すっと部屋を出ていった。
ホラー
公開:25/05/04 10:21
添寝ヶ淵
新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。
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