幸せのパスワード

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私、結婚するの。
試し行為だったかも、と後悔したのはすぐのこと。
付き合ってるわけでもないのに、引き留めてほしいなんて浅はかな願望。彼は少し言葉を飲み込みながら、正解を探しているようだった。

名前のない関係に終止符を打ちたかった。
友達よりも少し近い距離で季節を繰り返した、それでも私たちに明確なそれはなかったのだ。

「おめ、でとう」
「…そういうところだよ」

身体の関係もなかった。
もしかしたら、本当に友達だったのかもしれない。
でも、君は私が好きだった。そうでしょう?

「さよなら、しようか」

私の愚かな願いは、カランと氷が音を立てたのと同時に終わったのだ。
恋愛
公開:25/05/09 20:00
更新:25/05/10 02:50

A87(あやせ)

短いお話が好きです
幸せだけでは無いお話が好きです

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