いいね即決価格

高校生のユメは何気なく投稿した「実は余命半年なんです…」という嘘が、10万いいねを超えたのを見て震えた。
通知は止まらず、コメントには「応援してます」「感動しました」「私も似た経験が」――。

翌日、その投稿が「即決価格30万円」で売れた。プロフィールの“支援リンク”にもお金が集まった。
ユメは思った。「これが、私の価値なんだ」。

それから彼女は“嘘の私”を演じ続けた。いじめ被害、恋人の死、親との絶縁、難病…。
フォロワーは増え、数字は跳ね、現実の生活より“投稿の中の人生”の方が豪華で、愛されていた。

でも、ある日ふと、鏡の中の自分が誰か分からなくなった。
涙も感情も演技にしか思えない。

“本当の私”は、どこに行ったんだろう。