わかっているのは
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ある夜、老人ホームの一室の、ベランダに、一人の老人が、ぼんやり突っ立っている。老人は口をもぐもぐ動かしている。老人の口の中が、かすかに光っている。「あらあら」巡回に来た職員が、老人を見つける。「だめですよ、お外は寒いから」職員は老人の足元を見る。妖精の羽が、散らばっている。「また食べちゃったのね」職員は老人を部屋に戻す。「生ものはお腹壊すからだめよ」職員は老人をベッドに寝かす。そして、部屋の電気を消す。ぽかんと開かれた老人の口が光っている。職員は、妖精を食べると、お腹を壊すかどうかは、知らない。わかっているのは、妖精たちは、この老人を慕って、集まってきているということだけだ。
ホラー
公開:25/05/01 20:25
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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