サンドウィッチの稜線

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サンドウィッチといえば三角形が定番だ。この形は昭和25年に東京・台東区のパン屋で発明されたとされる。

だが最近の人々はパン屋よりも喫茶店の皿に盛ったやつを求めている。具材よりも盛り付け方に「映え」を見出す風潮だからだ。
数年前、喫茶チェーンのとある店舗の店員が、ストライキの一貫として切り方も並べ方もでたらめなサンドウィッチ群を生成したところ、偶然にも飛騨山脈の姿が悠然と現出し、また偶然、訪れていた起業家兼登山家がこの一皿を絶賛したことがきっかけだ。

その後、業界の景気は富士山の稜線を辿るかのように上昇した。
大抵の喫茶店には独自の〈山サンド〉があるし、パン峰の美しさ・高さを競う大会すらある。

それでもアウトドア派の僕としては、サンドウィッチは片手で楽に食べられるものがいい。特に登山には三角形でもなく、僕の祖父さんが賞賛した形でもなく、ラップに包んだ四角いやつがぴったりだと思う。
その他
公開:25/05/01 18:03

紅石紗良( 北陸 )

思いついたアイデアの備忘録を兼ねて書いています。よろしくお願いします!
Talesで連作を執筆中です。鉱物や宝石にご興味がありましたらぜひご覧いただければと思います。
https://tales.note.com/creche_collage/wmnx0phfegkgm

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