クビ
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「言いにくいんだが」
娘を見送り、昨晩の残りをお弁当に詰めていると、背中越しに夫の声が掠れた声で届いた。
「おれは」
「会社、クビになったんでしょ?」
振り向きざまの私の言葉に、夫は口をつぐんだ。
テーブルに近づき、私は夫の頭部を持ち上げた。目の奥を覗くと夫の首が鳴った。
気づいたのは今朝だった。夫の頭が枕に乗ってないので、持ち上げてみるとやけに軽い。うまく枕に乗らず首がコロコロ転がるので仕方なくテーブルに置いた。
(今日まで言えなかったのね)
少し寂しい。でも。
「でかけましょ」
私の提案に夫は目を見開いた。
「どこに」
「さあね。でもお弁当、二人分作ったのよ」
先のことなんてわからない。
でも、今日は二人分のお弁当を一緒に食べなくちゃ。
ピクニックバッグに夫を詰めた。見上る夫の視線が照れ臭くなり、お弁当箱を夫の上に置いた。
「苦しい。死ぬ」
夫のクビが呟いた。
娘を見送り、昨晩の残りをお弁当に詰めていると、背中越しに夫の声が掠れた声で届いた。
「おれは」
「会社、クビになったんでしょ?」
振り向きざまの私の言葉に、夫は口をつぐんだ。
テーブルに近づき、私は夫の頭部を持ち上げた。目の奥を覗くと夫の首が鳴った。
気づいたのは今朝だった。夫の頭が枕に乗ってないので、持ち上げてみるとやけに軽い。うまく枕に乗らず首がコロコロ転がるので仕方なくテーブルに置いた。
(今日まで言えなかったのね)
少し寂しい。でも。
「でかけましょ」
私の提案に夫は目を見開いた。
「どこに」
「さあね。でもお弁当、二人分作ったのよ」
先のことなんてわからない。
でも、今日は二人分のお弁当を一緒に食べなくちゃ。
ピクニックバッグに夫を詰めた。見上る夫の視線が照れ臭くなり、お弁当箱を夫の上に置いた。
「苦しい。死ぬ」
夫のクビが呟いた。
青春
公開:25/05/01 15:37
マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。
100 サクラ
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