AKIYA産業

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長いあいだ空き家になっていたばあちゃんの家を壊す日が決まった。記憶だけじゃなく記録として残したいと考え、写真を撮ることにした。
「はーい、こっち向いて〜! いいね、その表情!」
ジョークのつもりだったのに次第に家ものりにのってきて、いい笑顔を向けてくれるようになった。
晴れの日、くもりの日、雨の日――彼はいつでも機嫌よく、こちらの要望に応じてくれる。まるで最期の日が近づいていることに気づき、命を燃やしているかのように……。
写真を眺めているうちに、彼をアイドルとしてプロデュースしたくなった。自ら動くことはできないしファンを喜ばせるようなリップサービスもできないが、受け入れてくれる層はきっとあるはずだと考えたのだ。

一年前の俺の読みは当たり、アイドルグループ『AKIYA産業』には今や百軒の空き家が所属している。ファンのあいだでは聖地巡礼を兼ねた庭の草むしりがお作法となっているようだ。
その他
公開:25/05/03 16:08

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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