臭いものには蓋を

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いつもの仕事帰りの道に不思議なサービスを提供する店ができた。
「あなたの記憶、箱に詰めて販売します」
そんな謳い文句だった。とくに興味を惹かれるわけでもなかった。家につくと、郵便受けに小学校の同窓会の案内はがきを見つけた。小学生の頃の記憶なんて遠い昔に感じる。当時を少し思い出そうとしたが、記憶とは曖昧だ。仲の良かった友人の愛称は思い出せるが本名は難しかったり、通学路の景色さえ薄っすらだ。
そういえば。例のサービスを思い出した。
同窓会前に記憶を呼び戻しておきたい気持ちから利用しようという気になった。
「いらっしゃいませ。本日はどういった記憶をお求めで。」
店員に説明し箱を受けとった。追加で当時の香りもつけれるといわれたので面白半分でつけた。
部屋に戻り期待半分、怖さ半分で開けた。
当時の記憶と香りで充満した。時間とともに香りは薄くなる。しかし、消えない香りが。
私は欠席に丸をつけた。
SF
公開:25/05/02 19:14
更新:25/05/02 21:57

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