ピアノの家

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「はっ、、はっ、はっ」
 早朝の住宅街、静けさの中を走り続ける。最近始めたランニングだけど、この時間は好きだ。
「〜♪」また聴こえる。ピアノの音だ。
 毎日演奏している家がある。曲名はわからないけど、どこか懐かしい感じがした。

「お母さん、通りの角にある立派な門のお家知ってる?」
 夕食で、ふと話題に出してみた。
「えーと、ああ!ピアノの先生の所でしょ。ほら、お姉ちゃんが習ってた」
 小さい頃だったから覚えてないかな、と付け加えた。ピアノ教室だったのか。
「その先生少し会ってみたいかも」
 そう呟いた私、母は寂しそうにほほ笑む。
「素敵な方で、あなたも習わせたかったんだけどね……。随分前に亡くなったのよ。なんせ、ご高齢だったから」
「え、そんなはずはない!だって今朝も聴いたのに!」

 あのピアノの音はすっかり私の日課に溶け込んでいた。明日もちゃんと聴こえるかな?
 ――聴けるといいな。
その他
公開:25/05/02 15:28
更新:25/05/02 15:32

いぬさか( 関東 )

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。
同名で NOVEL DAYS でも活動しています。

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