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町のはずれに、看板もない古い喫茶店がある。
扉を開けると、棚にはずらりと瓶が並んでいた。中には、色とりどりの液体がゆらめいている。ラベルには「初恋メロンソーダ」「失恋ナポリタン」「涙のカレーライス」など、奇妙な名前が書かれていた。
「ご注文は?」
やわらかく声をかけてきた店主に、僕はなんとなく言った。
「初恋メロンソーダをください」
渡されたグラスは、炭酸が静かに弾ける緑色。
ひとくち飲んだ瞬間、胸がふわりと熱くなった。誰かの初恋が、心にそっと流れ込んでくる。制服の袖が触れたときのどきどき、呼び出すまでの緊張、そして言えなかった「好き」。
「これは……誰の感情ですか?」
「忘れたくても、しまいきれなかった想いです。誰かに届けば、少しは軽くなるでしょう」
ふと、棚の一番奥を見ると、小さな瓶にまだラベルが貼られていなかった。
きっと、あれは──まだ名前のない、僕の感情なのだ。
扉を開けると、棚にはずらりと瓶が並んでいた。中には、色とりどりの液体がゆらめいている。ラベルには「初恋メロンソーダ」「失恋ナポリタン」「涙のカレーライス」など、奇妙な名前が書かれていた。
「ご注文は?」
やわらかく声をかけてきた店主に、僕はなんとなく言った。
「初恋メロンソーダをください」
渡されたグラスは、炭酸が静かに弾ける緑色。
ひとくち飲んだ瞬間、胸がふわりと熱くなった。誰かの初恋が、心にそっと流れ込んでくる。制服の袖が触れたときのどきどき、呼び出すまでの緊張、そして言えなかった「好き」。
「これは……誰の感情ですか?」
「忘れたくても、しまいきれなかった想いです。誰かに届けば、少しは軽くなるでしょう」
ふと、棚の一番奥を見ると、小さな瓶にまだラベルが貼られていなかった。
きっと、あれは──まだ名前のない、僕の感情なのだ。
青春
公開:25/04/29 21:04
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