思い出の森

0
1

泣きながら家を飛び出したミオは森の奥へと走った。
気づけば、知らない小道。
そこは「思い出の森」だった。
白い霧がたちこめ、ふと見ると、ぬいぐるみのウサギが話しかけてきた。

「ようこそ、思い出の森へ」

そこには、忘れられたおもちゃや、影だけになった子どもたちが楽しく遊んでいた。
ミオは一緒に懐かしい歌を歌い、なくしたはずのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
そのぬくもりに、どこか心が落ち着いていくのを感じた。

やがて、ふわりとした影が現れた。にっこり笑うその人は、ミオのおばあちゃんだった。

「寂しかったね。もう、大丈夫だよ」

ミオは涙をぬぐい、大きくうなずいた。そのとき、森に光が差し、霧が晴れていった。

気がつくと、ミオは家の前に立っていた。
手には、あのウサギのぬいぐるみがしっかり抱かれていた。

(思い出の森……また、会えるかな)

ミオは空を見上げ、小さく微笑んだ。
ファンタジー
公開:25/04/29 12:09

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容