政府の品種

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この国では、人間も“品種改良”されるようになった。

文系型、理系型、従順型、愛想型──出生時にDNAを精査され、国家の推奨する“品種”に分類される。食事も教育も職業も、それに最適化されていた。

私は「発信型」に認定された。政府は私に「SNSで幸福を拡散する任務」を与えた。毎日、笑顔の写真と前向きな言葉を投稿し続ける。誰かの希望になるために。

でも、ある夜ふと、鏡の中の自分が笑っていないことに気づいた。

「この気持ちは、品種に含まれていないのかな」

そう呟いたとき、部屋の照明が自動で落ちた。モニターに警告が出る。

“非推奨感情が検出されました。”

そうやって、心さえも政府の管理下にある。

それでも私は、小さくつぶやいた。

「せめて、私の涙は私のものにさせてよ」
ミステリー・推理
公開:25/05/01 11:54

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