8月のクレヨン

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夏休みの終わり、古びた文箱の中から一本のクレヨンが出てきた。色は、にじんだひまわり色。
それは小学生だった僕が、初めて絵日記に使った色だった。

「海に行った」「スイカを食べた」「虫取りをした」
あの頃の夏が、そのクレヨンの色に全部詰まっていた。

今ではスマホで何でも記録できる。でも、あの頃の絵日記には、汗の匂いと笑い声があった。
誰のためでもない、僕だけの夏が、そこにはあった。

クレヨンを握って、白紙の紙にただひとつ、ひまわりを描いた。
少しはみ出したって、ぐしゃっとしてても、それが僕の8月だ。

もうすぐ大人になる。だけど、あのクレヨンの色だけは、きっと忘れない。
青春
公開:25/05/01 11:38

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