叫ぶ看板

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この街では、広告看板が“叫ぶ”のが当たり前になった。

「このラーメン、世界一!」「今すぐ買え!」「他と比べるな、感じろ!」

朝も夜も、通りは叫ぶ声で満ちている。無音モード?そんなの効かない。条例で“売る声”が義務化されたからだ。

人々はイヤホンで耳を塞ぎ、下を向いて歩く。それでも看板たちは叫び続ける。
「無関心が一番の罪だぞ!」
「お前の人生、クリック待ちだ!」

ある日、ひとつの看板が自我に目覚めた。
「俺は…売りたくない…静かに風を浴びていたいんだ…」

叫ばない看板。それはルール違反だった。
即日撤去。代わりにAI搭載の“絶叫型看板”が設置された。
「静かに生きたい?それ、誰が得するの?」

今日も街は叫んでいる。誰の声かも、もうわからない。
ミステリー・推理
公開:25/05/01 11:22

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