メロディサーフィン

自分が何の為にピアノを弾いているのか分からなくなった。
そんな時、かつてのライバルから連絡があった。『貴方に見せたいものがある』と。
一体何だろう？彼女が今暮らしている島へ向かった。
長閑な場所だ。久しぶりにピアノの事を忘れられそうだと海沿いを歩く。
海を見る。かつてのライバルがヨットの上でグランドピアノを弾いていた。
帆の代わりのピアノの大屋根が風を受け海面を走る。
浜辺に到着すると拍手喝采を浴びる彼女。
彼女は今、メロディサーフィンのパフォーマーをやっているらしい。
風を受けて水面を走るウィンドサーフィンのように、音を受けて水面を走るメロディサーフィン。私もやらせてもらうと久しぶりにピアノが楽しく感じた。同時に何の為にピアノを弾いていたか思い出した。
彼女に負けたくない。ただ、それだけだった。
だから決めた。大きなコンサートホールから、ここに届くくらい凄く楽しそうな演奏を届けてやると。