近所の神社にて

私の働く銭湯には神社の絵が描かれている。
普通、銭湯の絵と言えば富士山だが祖母曰く、「富士山からわざわざ降りてくるのも大変だろう」と。
私は最初、何を言っているのか分からなかった。
だがよくよく話を聞いていると、銭湯に富士山の絵が描かれているのは富士山山頂から神様が湯あみにやってくるからだそうだ。
その説明を聞いてもよく分からなかったがある日、湯に浸かっている客が店に訪れた客の数より多い事に気が付いた。
私の見落としか？と首を傾げていると、それは神様が人間に混じって湯に浸かっているからだと祖母は話す。
「神という字は裸という字によく似ている。人も神も、裸になってしまえば皆同じ。お前も偶には神様と一緒に湯に浸かってくるとええ」
祖母に促され、湯に浸かる私。常連客ばかりで皆、顔も名前も一致する。
この中に神様が…と、しかめっ面を浮かべる私に「どうしたの？」とコノハナサクヤさんが声をかけて来た。