バーチャル墓参りバスツアー

少子高齢化と過疎化が進み、遠方の墓参りが難しくなった時代。
そんな中で生まれたのが「バーチャル墓参りバスツアー」だった。
専用バスに乗り込み、参加者はVRゴーグルを装着。AIの声が穏やかに響く。

「まもなく、○○家ご先祖様の墓所へ到着します」

ゴーグルの向こうには、緑深い山あいの小さな墓地。蝉の声、風の音、線香の匂いまで再現されていた。

中学生のミオはこの日、ひいおばあちゃんに初めて“会い”に来た。
生前の笑顔、淡く色あせた家族への手紙。スクリーンに浮かぶ記憶の断片たちに、胸がじんと熱くなる。

「ご飯は食べよるかね？ 無理はしんさんなよ」
懐かしい方言で語りかける声はAIが復元したものだった。

ツアーの終わり、ミオは静かに手を合わせた。そこに本物のお墓はない。でも、伝えたい気持ちはちゃんと届いている気がした。

窓の外には夕焼け。
バスは、ゆっくりと次の想いの場所へ向かっていた。