夏空ラムネ

夏休み、僕の宝物はビー玉。ラムネの瓶に入ったあのビー玉だ。小さなガラスの中には、入道雲がふわりと広がり、セミの声が響いている。花火がポンと音を立て、風鈴がチリンチリンと涼しげに鳴る。そのすべてが、ビー玉の中に詰まっている。

「見てよ、ビー玉の中の夏を。」
僕は友達に自慢気に言う。

ビー玉を握るたび、ひんやりした感触が指に伝わってきて、思い出す。かき氷の甘い味、ひまわり畑の香り、夕暮れの空の色。どれもみんな、ビー玉の中にしまってある。

それから、僕は毎日ビー玉を持ち歩いた。心がモヤモヤするとき、ビー玉を手のひらに乗せると、ふと夏の暑い風が吹いてきた気がする。ビー玉の中であの夏のすべてが生きている。

「いつまでも、忘れないように。」
そう思って僕はビー玉をポケットにしまった。