ノイズの向こう側

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ラジオのスイッチを入れると、いつものようにノイズが耳をつんざいた。そこに、何度も聞いたような声が混じり始める。「あなた、どうしてこんなに迷っているの?」声は優しく、どこか懐かしい。それは未来の自分か、過去の自分なのか。それとも、全く知らない誰か?

「私はあなたを見ているよ。あなたの選んだ道が正しいかどうか、わからない。でも、一つだけ教えよう。」

心臓が早鐘のように打つ。正体不明の声が、耳元でささやく。次第にノイズは消え、しんと静まり返る。「もう少しで、会えるから。」それだけ告げると、再びノイズが大きくなり、電波が途切れる。

震える手でラジオを切り、目を閉じる。心の中に残るのは、その声だけ。未来の自分、過去の自分、はたまた他の誰か。ノイズの向こう側に何が待っているのか、答えは一つもわからない。ただ、確かに、誰かの存在を感じる。

それが誰だったのか、今もわからない。
SF
公開:25/04/27 10:42

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