小さな冒険者

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公園の隅に置かれた一本の木の棒。誰もが見過ごすそのただの棒を、子どもはまるで魔法の杖のように扱っていた。目を輝かせ、手に取るとすぐに言った。

「これ、空飛ぶほうき!冒険に行こう!」

周りの大人たちはその姿に微笑み、忙しい日常に戻る。だが、子どもはその棒を握りしめ、力強く走り出す。風を感じながら、まるで広い世界を駆け巡る勇者になったかのように。

木の棒は、時に光り輝く剣に変わり、時に魔法の杖にも変わる。どんなに大きな冒険でも、小さな手のひらには大きな力が宿るように風の中で無限の可能性を感じていた。

やがて夕暮れが訪れ、公園に残されたその木の棒は静かにたたずむ。大人たちはそれを何の変哲もない物だと見過ごすが、子どもだけが覚えていた。あの瞬間、何者にもなれる無限の可能性を感じたことを。
その他
公開:25/04/28 20:02

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