勝利の先に

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彼は、底辺からのし上がった。小さな田舎町に生まれ、親の庇護も受けられず、唯一の財産は鋭い直感とほんのわずかな運だけだった。

小銭を握りしめて勝負に挑み、ときに負け、指をくわえ、学んだ。賭けに必要なのは、力でも知識でもない。「タイミング」だ。少年はそれを、本能で掴み取った。

学歴も金もない彼がやがて町一番の資産家になったのは奇跡ではない。
小さな賭けに勝ち続けたからだ。

手に入れた豪邸、車、ブランド服。誰もが彼を見上げ、羨んだ。

「……勝ち続けるのも、退屈だな」
誰にも聞こえないように呟いて
彼は一枚のカードを伏せた。

「よし、俺、大富豪な!」

彼が宣言すると、縁側の友人たちは、ぐぬぬと顔をしかめた。夕暮れ、畳に散らばるトランプカード。ジュースの王冠が、ころん、と音を立てた。
その他
公開:25/04/28 16:36

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